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2009年8月

鷲見ヶ原うぐいすの論証

32275786 久往 四季/カツキ (電撃文庫) ★★★☆☆

 やっと旅行から帰ってきました。旅行中は忙しすぎて本読む暇も無かった……。

 さて、電撃文庫8月の新刊、その一つです。内容はとあるあやしげなパーティに招かれた主人公とヒロイン。そこで殺人事件が起きて……というクローズドサークルなミステリー。

 ……のはずなのだけれど、最後まで読み進めると、どうも殺人事件は単なる蛇足というか補足というか……なくていいんじゃね?

 作品の雰囲気はよく出来ていました。あやしげな洋館、不気味な麒麟像、嵐の夜に閉ざされたクローズドサークル。館の中での推理も論理的で面白いのですが……。

 如何せん、推理と呼ぶには稚拙というか、超能力とウンチクとただの屁理屈合戦というか、ちょうどこの間やった『うみねこのく頃に』みたいな、ミステリーと呼ぶには疑問が拭えない内容であったこと、しかし物語の大部分は殺人事件とその推理に費やされてしまうことがまず一点。

 次に、冒頭で語られる『悪魔の証明』の結果が、単に『お前は二重人格の片割れでした』っていうのはないだろう、というのがもう一点。それだけの話に殺人事件は必要ないと感じました。あるいはこっちの悪魔云々が蛇足だったか。

 どちらにせよ、物語のメインとなる部分が『殺人事件』とそれにまつわる推理と論証であるなら、もう少しまともなオチを用意してほしかったです。この作品は作者が何を書きたかったのかがいまいちわからず、オチに関しても事前に一度引き合いに出されたものであるため、アッと驚くものがありませんでした。

 そんな感じで物語はわりとぐだぐだでしたが、この作品の見所としてキャラクターが魅力的に描かれているという点があります。というか、主人公と死体を除く登場人物が全員女性って……作者は何か狙うところがあったのでしょうか?

 そうそう、作中で名前が出てくるにもかかわらず一切の登場がなかった薬歌玲というキャラクター、意味のないキャラを入れるんじゃねーと思いつつ調べたら同じ作者の別シリーズに登場するキャラクターのゲスト出演だったんですね。こういうちょっとした遊びができる作者はシリーズを読む上でちょこっと楽しめるのでわりと好きです。これで作中、このキャラクターにも出番と役割がちゃんと与えられていればな……。その辺り、あまり遠慮しないほうが別シリーズのファンも喜ぶと思うんですけれどね?

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神様の言うとおりっ!

32275784 西村 悠/Show(電撃文庫) ★★☆☆☆

 新人かと思ったら違った、西村先生の新作です。

 内容としてはドジっこな神様の手違いで死んでしまった主人公・恭一が、幼馴染の巫女姉妹と共に生き返るために神様のお手伝いをしてGP(ゴッドポイント)をためるというお話。

 概容はわりとよさげなのですが、内容の方、ギャグとシリアスがない交ぜになりすぎてどっちつかずの中途半端なイメージがあります。で、あるから普段は人の話を聞かないようなキャラクターが急にいい人ぶったりしんみりすると物凄い不自然。もっとギャグ的に突出するかシリアス・まじめに攻めるかの差別化を図った方が良かったのでは?

 ストーリーに関してもなにかこじつけっぽいのが目立ちます。『これは本当は心構えを見るためのテストで結果云々はカンケイなかったんだー』なんて辺りが特に。なんていうか……青クセエ。各チャートも意外性が無い平凡な展開で、一つの物語というより場面場面を積み重ねただけの台本みたいでした。

 なーんかシリーズ化を狙うような終わり方でしたが、続くんでしょうかこれ。続編を買うかはその月の刊行予定によるなー……。

 それはそうと、電撃文庫から出る新作に萌え要素を排したものが少なくなっているような気がする……。いや、少しもあっちゃダメだというわけじゃないですけど、なんかイラストと上面なちょっとHな展開で読者を引き付けようとする露骨な本が増えてる気がするなぁ……。このままだと電撃もMF文庫みたいなダメレーベルになってしまうんじゃないだろうか、ちょっと心配です。

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ソードアートオンライン2 アインクラッド

32275773_2 川原 礫/abec (電撃文庫) ★★★

 『アクセル・ワールド』や今シリーズで有名な川原先生の新刊です。前作のレビューでちらほらと『半端な終わり方だったから続編が楽しみ!』みたいなのを目にしたのですが、この展開で続編とかねーという予想通り、続編ではなく外伝、サイドストーリーです。

 あとがきで本人も述べていましたが、全部キリトが中心となる話であり、恋あり涙ありな展開となっているのですが、どれも基本として中レベルプレイヤーがキリトツエーと感心するお話です。ホントですよ。その為展開が似たり寄ったりになってちょっと勿体ない気がしましたね。どうせなら一つくらいアスナとかクラインを中心にした物語でもよかったのに。

 SAOの色々な一面がわかる面白い一冊でした。が、それはあくまで『世界観の面白さ』でありストーリーの面白さではないのですよね。ストーリーそれ自体はあくまで王道というかありがちというか……チープな気がします。最初のビーストテイマーの話などは短編としてよく仕上がってと思いますが、のこり3つが……とくに3つ目、迷子プログラムの話なんかがちょっとこじつけくさいかな、と。『アクセル・ワールド』の1巻末で川上先生からもメッセージされていたように、魅力的な舞台を活かしきれていない、とても勿体ない感じですね。

 裏を返せば世界観という設定一つで物語を面白いと錯覚させるほど魅力的な舞台構成は作家としてすごい力ですよね。この魅力を保ったまま意外性と面白みのあるストーリーがつくれれば……おそらくライトノベルというものを代表する作家になるのは間違いないんじゃないでしょうか。

 巻末で『アクセル・ワールド』の3巻は予告されていましたが、よくみるとSAOの3巻の予告もあります。ついでっぽく。個人的には最後のストーリーでクラインが手に入れた復活アイテムが重要な伏線である気がするのですが。前回、確かに死んだはずのキリトやアスナがなぜ生き残れたのか、この辺りにつながったりしないかなぁ。

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境界線上のホライゾンⅡ下

32262112 川上 稔/さとやす(電撃文庫) ★★★☆☆

 やっと読み終わったホライゾンⅡ下。今月はアニメに触発されてうみねこのく頃にとかやってたので読むのがかなーり遅れました。

 主な流れを纏めると……まとめきれないよ。英国との関係強化のために三征西班牙と代理戦争”アルマダの海戦”やっちゃったり、かといったら英国に喧嘩売ってブラッディメアリを救出(事実上は誘拐)したりと大騒ぎです。

 結論から言うとⅠと同様面白かったです。個性的なキャラクターと個々の長所を活かしつつ見せ場を作る劇場型構成、臨場感溢れるアクションなどなど、褒めるところは多々あります。

 が、やっぱりⅠからと同様、個々の動きを細かく描写しすぎて全体としての場が想像し難い、政治的ウンチクが冗長でついていきにくい、などなどの問題点も見られます。それが結果的に読者層をコアなファンに限定し、こんなに面白くてこんなに息の長いシリーズを続けている作家さんなのにアニメ化とかされない原因なんだよなぁ・・・。だからバトルシーンや長い演説よりもトントンと進むキャラクター同士のバカなやり取りが一番の見所であると個人的に思います。

 要するにライトノベルなのに全然ライトじゃない、むしろヘヴィノベルとかディープノベルとでも命名すべき内容は完全に賛否が分かれるところです。私のように細かいところまで読み込む(というよりそういう細々したのが好き)な人には受けるけど、物語を雰囲気で楽しむ人には敬遠される。そんな印象でした。まあ、Ⅲ・上楽しみにしてますけどね。

 次回は極東の軍事的拠点らしいIZUMOが舞台。三河の時は武蔵内ばかり舞台になって三河の街の様子とか全然だったから、実質的に初めて極東の町が舞台となるわけですね。

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