« ほうかご百物語 5 | トップページ | 紫色のクオリア »

夜と血のカンケイ。

32262111 丸山 英人/osa (電撃文庫) ★★☆☆☆

 第15回電撃大賞で<MAGAZINE賞>を受賞した丸山先生の長編デビュー。あんまり期待はしていなかったですが、わりと面白く読めたと思います。

 自分の血を吸わず自分を見捨てて去った吸血鬼を見返すためだけに身体を健康に保ち続け美味しい血の持ち主となった主人公 陶原。吸血鬼の夜音と再会を果たし、血を吸わせる条件で何でもいう事を聞かせられるようになったのだが――?

 つまり、『好きな人に振り向いてほしい一心で自分を磨いていた』陶原の心境がわかりやすくてよかった、というよりわかり易すぎてよくなかった。相手への気持ちがそのまま憧れや恋愛感情に置き換えられるわけですね。序盤のイヤガラセも好きな子をいじめてみたくなるという男の子特有の心理なのでしょうが、どこか徹しきれず躊躇いが捨て切れていないあたりがよく陶原の気持ちを表現していたと思います。

 反面、夜音の心理はいまひとつわかりづらい。人間はただの餌、家畜、その人間にコキ使われる屈辱を味わわされて――と反感する気持ちはわかるのですが、ならばなぜ陶原に好意を持つか。学校のロッカー事件以前から陶原と会うのを楽しみにしていたふしがありますが、それが何故なのかよくわからなかった。少なくともその時点までで主人公に魅力的な点はなかったよなぁ……。

 ストーリーが読みやすくわりと平凡な終わり方でオチもいまひとつなのは新人であるがためでしょうが、冒頭に多用される『復讐』の単語からはもう少し別なものを期待していました。少なくとも「見返してやりたい!」っていう感情を復讐と呼ぶのは違うような気がします。んで復讐と言いつつやってることは単なるウサ晴らしだし、序盤で一旦読むのをやめようかとも思いました。この辺りは構成上の問題でしょうか、序盤の主人公がとにかく魅力に欠ける。最低ならまだいいのですが単なる意味不明なキャラになってしまっているのが残念でした。この辺り、もう少し上手にまとめて主人公の回想は省いて目的もぼかしたまま話を進めていたらなぁ……もっとインパクトのある作品になったのに。なまじ復讐心がそのまま好意だったという仕掛けが面白いだけに残念でした。主人公の目的『復讐』をもっと隠すかもっと押し立てるか、どちらかにすれば少なくとも序盤の回想シーンで最後の展開まで見通されるということは無かったはずです。

|

« ほうかご百物語 5 | トップページ | 紫色のクオリア »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1216046/30463032

この記事へのトラックバック一覧です: 夜と血のカンケイ。:

« ほうかご百物語 5 | トップページ | 紫色のクオリア »